コミティア出張編集部への持ち込みまとめ

月刊コミックガーデン@名古屋コミティア
(noteにまとめた記事ほぼコピペなので文体が丁寧)

ざっと目を通した後の率直なコメント
・単行本3巻分相当になりそうなボリューム
・「何かやりたいことがあって」描いていることは感じられる

その後は導入で読者を惹き込むために必要なこと、さらに「描く」作業以前に必要な準備について、既存の作品(漫画、小説、映画作品)を例にお話しました。
漫画の具体的な改善点や技術的な話については、あまり出なかったかも。

読者はマンガを読もうと思ってあなたのマンガを買うわけじゃない

たとえば「ブッダとイエス・キリストが、立川で2人暮らしを始める話」と聞くとどう思うか?

漫画『聖☆おにいさん』の概要です。
「なんだその組み合わせとシチュエーション…どうしてそうなったんだ、何が起きるんだ」と読者の興味をそそり、想像力を掻き立ててきます。

筆者の漫画と同様、火星を舞台にしたマンガと言えば『テラフォーマーズ』が浮かんできますが、これも「火星で」「ゴキブリが敵」というキーワードを挙げただけで、強烈な絵面を想像してしまいます。

描いた作品を手にとってもらうには、そういうインパクトが必要。

・キーワードから絵面が浮かぶ
・ヤバそう
・見たことない
・どういう話だ?
・自分の好きなものがありそう!

現在の読者はパッと見て分かる説明で本を手に取る/サムネイルをクリックするかを判断しているそうです。
漫画の企画において、この「パッと見て分かる説明」というものは上記のような言葉によるものと絵によるもの両方が必要で、表紙やサムネイルにしてもキャラクターの属性がパッと見で分かるものでないと厳しいようです。舞台設定が伝わるものだと更に良し(「何となく好きな絵柄」止まりでは足りない)。

だんだん不安になってきて、「つまりはタイトルが内容を表す系にした方が良いということですか?」と質問したところ、商業企画側としては「ああいうタイトル系」というジャンルなので、そういうことではない…とのことでした。

つまり私はどうすれば良いですか

拙作『リアルインベーダーゲーム』は、「ある事件が起きて」「非日常から脱出する」話です。

起きる事件がすごく衝撃的で、一体どうなっていくの?と読者に想像させ、続きが知りたくなるようなものが望ましく、第1話には「これから何が起こるのか?」と思わせるような要素をできるだけ詰め込めると良さそうです。そしてそれらをひと目で説明する「絵と言葉」が必要。
(※ 2021年秋現在、未だにできていない…これって超難しくね??)

キャラクターを立てるということ

さらに、拙作のような「主人公 vs 敵」という構図のストーリーにおいて「主人公サイドのキャラクターが重要」なのは言うまでもないことなので、敵の魅せ方について既存の作品を例に挙げてお話しました。

CASE1:敵のキャラクターの魅力
映画『エイリアン』、『プレデター』、『ターミネーター』

これらは決して「それだけじゃない」のですが、パッと見たときのツカミとしては全て「敵キャラの魅力」を入り口にしています。それから筆者がこの漫画を描く上で最も根幹で影響を受けたゲーム『バイオハザード』、これも「ゾンビ」というキャラクターが入り口でした。

CASE2:実体がないという特徴の敵キャラクター
小説『ぼぎわんが、来る』
(後に『来る』というタイトルで実写映画化)

敵は「ぼぎわん」という架空の幽霊で、学習能力を持ち、声色を変えて味方のふりをする厄介な相手だそうです。「ぼぎわん」は実体を持たないオカルト的な存在であり、こういうケースはビジュアル的に難しい。でもキャラはすごく立っている…らしいです。(筆者はホラーがダメなので詳細はチェックしていません)

CASE3:敵はキャラ立ちしてないけど…
小説『虚構推理』(後にコミカライズ)

このお話に登場する敵は「ある能力によって現実となった人々の噂話」です。「実はその噂は嘘である」と人々を納得させ、書き換えることで問題を解決していくというストーリー。敵そのものはキャラ立ちしておらず(だって無理でしょ…笑)、コミカライズ版ではこうした原作特有の面白さを活かしきれない問題があったそうです。
そこで、原作小説で既に盛りだくさんだった主人公サイドを、更にマンガ向けにチューニングしてこの問題を打破しています(特にヒロイン)。

…といったように様々なケースがあるのですが、敵味方共に「キャラ立ち」という観点で見せ方を工夫する必要があることは共通しています。

『リアルインベーダーゲーム』の場合、「敵の実体はあるのか?」「あるとしたら、エイリアンのような見た目?」「どんな性質と能力がある?」と気を惹く要素は揃えられそうですが、後でそこのところ答えをしっかり提示してやらないと読者はモヤッとしちゃうだろうね…という結論になりました。

SFの序盤って、やること多すぎてページ数が嵩みます

SFモノって、とにかく世界観の説明が難しいです。上手くやらないと説明過多で読者を辟易させるか、説明不足で読者が置いてけぼりになるかの2パターンに陥ってしまいます。

一番最初に分からないといけないのは、「これさえ分かればとりあえず読める」部分。後から分かればいい部分は後回しにするのが良いそうです。
まあ…その取捨選択が難しいんですけど。

SFは世界観の説明で文字が多くなりがちなので、絵で説明できること、絵の方が効果的に伝わる部分はどんどん絵に入れ込もう、とアドバイスをいただきました。

そして、絵と言葉の両方を組み合わせることが重要だそうです。

基本的ですごく単純な例を挙げると、笑っている人の絵にモノローグ(フラッシュフキダシ)で『ぶっ殺すぞ』と入れた場合、絵だけのときと全く違うものになってくる…というような字と絵の相乗効果を狙っていくと良い、ということでした。

狙った読者に尖ったものを刺す

お話して下さった編集者さんが担当されている漫画は「百合」要素が入っているのですが、この「百合」はある程度の読者獲得を期待できるジャンルだそうです。
それとは違い、「SF」や「ファンタジー」は作品の振れ幅が広く、読者層も厚すぎる…つまり、『色々と ふわっとしている』から、中途半端なモノを投げても誰にも引っかからずに他へ流れていってしまうのです。
だから、ターゲットを明確にして、彼らに向けて魅せ方を工夫することが重要なジャンルとも言えます。

世界観とキャラクターとQとA

Q:宇宙(火星)好き向けに、「細部まで正確に作り込まれた世界設定」は売りになるでしょうか。『火星の人』(映画『オデッセイ』の原作)のような緻密な理系ネタによる面白さを出すことは?

A:設定の緻密さは『火星の人』の魅力の一つではあるものの、一番重要で面白い部分は「主人公であるマーク・ワトニーのキャラクター」です。

Q:キャラ立ちに関しては、主人公と相棒の性格が正反対コンビであることを意識して描きました。描写が不十分ということでしょうか?

A:作中では2人の性格の違いが事実として提示されているものの、『彼らのそういうところを楽しんでね!』という感じにはなっていないです。現状、出来事を追うだけで、いっぱいいっぱい…という印象。

作中の設定や起こる事実を「正確に理解してもらうこと」を目的にすると、なかなかエンターテイメントにはならないです。細かいことを抜きにして楽しんでもらうことが重要!だそうです。

映画『メン・イン・ブラック』のメインキャラは青年とおじいちゃんの凸凹コンビだけど、彼らのやり取り、掛け合いを見ているだけで楽しい作品になっています。そういう掛け合いをしながら、事件が起こり話が進んでいく面白さがあります。
どういう事件だったかより、どんなキャラだったかの方を先にイメージしますよね?筆者はキャラしか覚えてません。

彼らならこうするだろうか?とある程度期待させつつ、想像もしない方法で解決したり、思いがけない別のトラブルを呼び寄せたり……色々。

『リアルインベーダーゲーム』を見てみると、キャラの違いがしっかり描写されているのは事件が起きた後、極限状態の2人だけでした。日常とのギャップを考えてみてはどうでしょう、とアドバイスを頂きました。
(※ その後、第1話リメイクではこの辺に気を付けました)

その他いろいろ

その他、鼻のデフォルメとかでまだ悩んでいる…というお話もしたのですが、「憧れの作家さんから取り入れるのが手っ取り早いよ」とのことでした。なるべく多人数見つけて、いずれ自分のモノにしてねってことだと思います。

絵柄、ダサくないですか?と聞いたところ、「特にダサくはないし、個人的には描き込みや肉感があって良い」とコメントいただいたのですが、「敢えて言うなら瞳の描き込みが多いのが今の流行り」だそうです。